破損パーツふぇち とわ?
モチロン私は変態です。(キッパリ)

その私の機械屋としてのフェティシズムを一言でいうならば「破損パーツふぇち」と呼ばれるジャンルに属します。もー壊れた機械を見るのが大好き! ブローしたエンジンなど最高のオカズですな。
壊れ方にも依りますが、一つの部品が壊れる事によって連鎖的に周辺パーツも巻き込んで破損し、ナニが何やらワヤヤな状態になるモノです。その原因を特定し、次に繋げるためには何より壊れた部品を子細に観察することです。「死体こそが最も雄弁に犯人を照らし出す」とベーカー街221Bの辛気臭い探偵殿が言ったかは丸で知りませんが、何しろ壊れたパーツこそが最高の羅針盤たり得ます。

ソコで右の写真です。ものの見事に溶けたこのピストン、随分と前にWOTY号の腹の中から出て来たモノです。分かりづらいでしょうが、被害はインテーク側に集中しているのが見て取れます。このこと自体は別に珍しくもありません、デトネーション(一般にノッキングと言われる異常燃焼)による溶損は必ず吸気側に起こります。
が、何故に吸気側?ってのが私にはズ〜〜〜っと謎でした。誰も教えて呉れないんですもの。
ターボでちょっとブースト間違うとポンッ! NAでも欲かいて圧縮比12を越えてくると点火時期にチョー神経質。すぐに写真のような仕儀と相なります。この頃は12.6:1なんてぇ数字を使っていたのよね。
で、ナゼ冷たいイン側が溶ける? コレには燃焼スピードのバラつきが関わっています。一回の燃焼中にIn側とEx側の火炎伝播速度が違う、具体的にはEx側が先に燃えてしまう事が問題だったのです。10年ほど前、コレが理解できた時は嬉しかった、教わらずに気付いたのが嬉しかったなぁ。この辺のエンジン機種ごとの異常燃焼耐性を概念的に「メカニカルオクタン価」と呼びます。

ソコで左の写真、現在WOTY号を始め弊社でチューンしたエンジンに組まれているヘッドガスケットの怪しげな修正画像ですな。残念ながら無修正画像はお見せしかねます。単品販売もしていません。だって苦労の割に出来上がった物は簡単にコピー可能ですからね。
チューンによって崩れた火炎伝播速度のアンバランスを、ノーマルガスケットの加工によって均一化してメカニカルオクタン価を引き上げているワケですが、その加工位置やサイズに試行錯誤があります。大メーカーなら計測機器を山モリ使って安全に求められるものを我々は壊しながら探すのですね。当然ヤリ過ぎても壊します。ですが、最終的にヤリ過ぎてEx側が溶けた時は "I get you!" って感じでしたね。答えはコノ少し手前に在る。
喜ぶ私の隣りでは「こいつ俺のエンジン壊しといてナニ喜んでんだ?」って憮然とした弊社社長が居てアレでしたが。(汗) この答えが出たことにより我らがKチューンドの熱耐久性は大幅に上がり、今やピストン溶損は過去のものとなりましたとさ。

こうして破損パーツの山を愛で、シコシコと吸収することで我々人類は進歩して行くのでありマス。
(なんちゅー大仰なまとめぢゃ!)